アンティークにおけるヴィクトリアン様式について
1837~1901年 大英帝国が飛躍的に繁栄した時代
英国特有のスタイルであるヴィクトリアン様式とは、ハノーバー朝・ヴィクトリア女王(在位1837-1901)時代の建築・美術・工芸様式 のことです。産業革命以降、世界の「工場」として大英帝国が飛躍的に繁栄した時代に、その栄華を世に示すがごとくこの様式は発展しました。
華やかで装飾的なデザイン
が特徴であるヴィクトリアン様式が発達した19世紀。
ヴィクトリア女王の治世時代のイギリスは、古代ローマ帝国以上に植民地を広げ、大英帝国として最も栄えた時期を迎えていました。
多種多様なスタイルが混在してたヴィクトリアン様式
ヴィクトリアン様式は1837年から1901年までと他の様式に比べに長く、63年7ヶ月という時の流れの中でさまざまな過去のデザインがリバイバルし、自由に組み合わされた時代です。今まで貴族や上流階級などの一部の階級のために作られていた様式家具はなくなり、一般市民向けに家具や食器、銀器、小物などが作られていきました。
大きな戦争のなかった時代であったからこそイギリスが最も繁栄することができ、上流階級だけではなく一般家庭向けの家具や日用品にも様々な装飾様式が取り入れられ、発展していきました。
(出典:MAIN LINE TODAY) 優雅で女性が好む装飾がふんだんに使われたヴィクトリアン様式の応接間。 ソファやチェアの猫足、花や植物プリントのカバー、壁面は濃い目のウォルナット材に古典様式のモールディングがされており、暖炉にはリボンガーランド装飾など重厚さと華やかさがミックスされています。
新しい時代の工業的材料を積極的に採用
ヴィクトリアン様式のアンティーク品はその華やかな特徴あるデザインの他、従来の石や煉瓦などに加え、素材に鉄・コンクリート・ガラスといった新しい工業的材料を積極的に採用したことも特徴のひとつです。
基本的には、尖塔アーチや四つ葉モチーフなどゴシック特有のデザインをちりばめたゴシック・リバイバルの風潮が強く感じられます。それに加え古典的なデザインをふんだんに取り入れ、細やかな装飾や植物・動物モチーフ、金属・ガラスなども使用し、豪華さが際立ったデザインが多く見られます。
残念ながらヴィクトリア王朝時代に続くエドワード王朝時代以降のイギリスは世界大戦も原因となり凝った装飾のハンドメイドのアンティーク品がかなり少なくなります。 その後の時代はほとんど機械によって作られるアイテムが増え、古くからあった王室御用達の陶器メーカーや銀食器メーカー、家具工房などの多くがなくなってしまいました。
イギリスで買い付けに行っても、「装飾が素晴らしい!凝った作りで使用してる材料も上質」と思えるアンティーク品の多くがヴィクトリアンまたはエドワーディアン時代のものになりますが、一部のメーカーはヴィクトリアンのデザインにこだわり、1960年頃まで職人によるハンドメイドの家具や食器などを作り続けていました。